「Air」の苦戦を補ったエコシステムの強さ
今回の首位奪還劇において特筆すべきは、一部モデルの不振をシリーズ全体の勢いがカバーした点だ。
シリーズの目玉として投入された薄型モデルのiPhone Airは、薄さと引き換えにカメラ性能やバッテリー持続時間を犠牲にした「トレードオフ」や、割高な価格設定が消費者の一部に敬遠され、立ち上がりが鈍かった。
ニッチな新形状(フォームファクター)がマス(大衆)層に浸透する難しさが露呈する形となった。
しかし、最新の調査結果は、そうした個別モデルのつまずきが、アップル全体の成長を阻害しなかったことを示している。
独自のAI機能「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」の完全導入が遅れているにもかかわらず、高機能な「Pro」モデルへの根強い支持や、iOSエコシステムへの「囲い込み(ロックイン)」効果が、買い替え需要を自社製品へと誘導したようだ。
サムスンと中国勢のジレンマ
一方、長年首位を守ってきたサムスンも2025年の出荷台数は前年比プラス成長(約5%増)を維持する見通しだ。新興国向けの「Galaxy Aシリーズ」の強化や、サプライチェーンの強靱さが功を奏している。
しかし、市場構造の変化がサムスンの首位防衛を阻んだ。
サムスンや中国メーカー(小米やOPPOなど)が主戦場とする中低価格帯市場では、部材コスト(特にメモリー価格)の高騰と価格競争の激化が利益を圧迫している。
これに対し、高価格帯(プレミアムセグメント)を独占に近い形で支配し、中古市場からのアップグレードパスも確立しているアップルが、収益性と台数の両面で優位に立った構図だ。