今回の2人のケースは単なる選手比較を超えて、NPBとMLBの間に横たわる構造的な差異すら浮かび上がらせている。NPBは「スターの爆発力」を評価する文化が強い。
NPBとは違う評価の尺度
一方、MLBは「資産としての持続性」を評価する。このギャップが、村上と岡本という“NPBの双璧”の評価に、日本とは違う角度から見た差を生んでしまう。日本球界が国際市場での存在感を高めるためには選手の育成・起用法・データ活用のあり方を、よりMLB的な構造へシフトさせる必要がある――。そうした“警鐘”と捉えられなくもない。
ただ、岡本は1996年9月生まれの29歳。村上は2000年2月生まれの25歳で岡本よりも3学年、年齢にすれば4歳も若い。「U-30」が評価ラインの大きな分かれ目となるMLBの世界において、そのセオリーから判断すると村上の方がかなり有利な大型契約をつかめることになる。
年齢という“時間資本”は、MLB市場では最も強い通貨であり、村上はその価値を最大限に持っている。そして適応にさえ成功すればドジャースの大谷翔平と激しい本塁打王争いを最後まで演じ、今季ナ・リーグ最多の56本でキングに輝いたフィリーズFAのカイル・シュワバーの「廉価版」などと揶揄できないほどの破壊力を村上は若いがゆえに見せる可能性を秘めている。
一方の岡本はここまでプロ通算11年の経験値を新天地でも生かしつつ着実に結果を積み上げていけば、評価はさらに伸び、MLBにおける“勝てる打線の核”として扱われるだろう。特に、守備位置の柔軟性と中軸での安定感は、MLBのプレーオフ志向の強い球団ほど重宝する“戦略資産”となる。
いずれにせよ、今冬のMLB市場は日本人スラッガー2人の評価を通じて、MLBという巨大市場の構造そのものを映し出す鏡となっている。村上の「爆発力」が米国でどう再現されるのか。岡本の「再現性」がどれほど信頼を勝ち取るのか。その答えは日を重ねていくごとに輪郭を徐々に帯びていくことになる。



