岡本は「勝利方程式の骨格」になる可能性
その一方、球団フロントは資産価値としての持続性を最も重視する。この構図は金融市場における「銘柄人気」と「企業価値」のズレにも非常によく似ている。
さらに言えば、岡本の使われ方についてMLB各球団はかなり具体的な未来図を描き始めている。三塁・一塁・外野という柔軟性により、MLBの「勝てる構造」において最も不足しがちな中軸の左右バランスを整える調整弁として機能する可能性が高い。
巨人時代に激しいプレッシャーにも屈することなくジャイアンツ強力打線のクリーンアップで年単位のトータルにおいてブレが少ないという特性を見せたことは、単に打者としての能力が優れているところを示しただけではない。群雄割拠のMLBロースターでも潰されることなく生き残り、その中核を担うべき存在として真価を発揮する可能性も垣間見せている。
つまり岡本は「スター性を補完する存在」ではなく「勝利方程式の骨格を形成する逸材」として評価され始めているのだ。
そして、ここにMLB特有の政治性が加わる。MLBはデータ主導によるアナリティクス革命以降、球団経営を最適化アルゴリズムとして扱う傾向を強めている。選手の能力やスター性ですら、市場の状況、契約年数、怪我リスク、ポジション価値、そしてチーム構造など、複数の変数の総和として評価されるようになった。
このシステムにおいてはたとえ爆発力が魅力であっても、再現性が低いと大型契約は極めて難しい。つまり、構造的に村上よりも岡本が有利になる局面が多いのだ。これが今年のMLB市場で起き始めている“評価逆転現象”の核心である。