しかも三振率は村上よりも低い。これはアナリティクスが重視する「再現性」を高水準で満たす要素である。前出のア・リーグ球団アナリストは、次のように言う。
米メディアは村上のほうを高評価
「村上が『爆発力型』なら、岡本は完全に『再現性型』だ。MLBの大型契約は、結局のところ『故障しない』『波がない』『計算できる』というチェック項目をクリアした選手に集まる。岡本はその条件をほぼ満たしている」
また、MLB各球団側が最も慎重に見極めようとしているのが、メジャー投手が繰り出す「インハイへの速球」に対する適応力(アジャスト)である。
村上について「150キロ台のインハイが課題」と指摘されるのに対し、岡本は比較的このゾーンに強い。常勝軍団・巨人で長きにわたって4番の座を張り、警戒されることが多かった上に重圧のかかる場面での打席も幾度となく経験した点は、かなりのストロングポイントになっていると言い切れる。日本での投手攻めがMLBのスタイルに近かったこともあり、既にメジャー仕様の打撃に近いという評価もある。
さらに岡本には、守備位置という明確なアドバンテージがある。一塁・三塁、さらに外野もこなせる柔軟性、そして守備指標でもNPB平均を確実に上回る数値を残していることは、MLBにおいて極めて重視される。DHか一、三塁偏重の村上との差が最も顕著に現れているポイントといえるだろう。MLB関係者の中からは「村上の場合、守備力もそこまで高いとは言い切れない」と辛口の指摘も出ている。
興味深いのは米主要メディアのランキングでは村上が軒並み上位に置かれていながらも、MLB各球団の実務者レベルでは「岡本のほうが上ではないか」という空気が広がっている点だ。この乖離が発生する理由は、単純ではない。
どうしてもメディアは実績や話題性、スター性を重視する。村上が2022年にNPB史上最年少となる22歳で令和初のトリプルクラウンを達成した経歴は、やはりダテではないということだ。