評価を集める岡本の「安定感」

 ナ・リーグ球団の極東スカウトは、こう分析する。

「22本のうち半数以上がセンターから逆方向。これは能力の高さを示しているが、その一方“本気で内角で勝負された場面”は少ない。皮肉な表現をすればMLBの各球団が知りたかった情報が、最も得られなかった1年になった」

 こうした事情が絡み、村上の評価は“高値圏”と“警戒圏”の間で揺れ続けている。それでも市場では5年180億円前後という契約規模が予想されており、必ずしも期待値が下がっているわけではない。村上が持つ日本人離れした“爆発力”は、MLBにとっても魅力そのものだからだ。

 そしてここにもう一つ、MLBが見逃していないポイントがある。それが「若さ」という最大の資本である。25歳で市場に出るという事実は、MLB全体の評価モデルにおいて契約期間中にピークが訪れる可能性が最も高いタイプを意味し、球団側にとってはハイリスク・ハイリターンではなく、むしろ合理的な投資対象に映る。

 しかし、問題はここからである。

 村上に比べれば、岡本の評価は「静か」だ。だが、静かであることと低いことは全く違う。MLBサイドでは「実は岡本の方をより高く評価している」という声が着実に増えている。

 その最大の理由は、岡本が長期間にわたり「成績がほとんど揺れない打者」である点だ。巨人の4番に定着した2018年以降はシーズン30本~40本を安定して積み上げ、OPSもほぼ毎年規定ラインを超えてくる。

球団がMLB挑戦を容認してくれたことを受け、記者会見する巨人の岡本和真(写真:共同通信社)

 2023年こそ27本で7年連続30本塁打には3本足りなかったとはいえ、それでもリーグ2位。今季も15本塁打に終わったものの、試合中のアクシデントによる左肘の靱帯損傷で約3カ月も長期離脱していたことを考えれば、かなりのハイペースで量産した数値と言い切れる。