最大の争点は、村上がメジャー投手に対して「どの程度再現性のあるパフォーマンスを残せるのか」という点だ。あるア・リーグ球団のアナリストは、村上の打球角度、スイング軌道、そして150キロ超のインハイに対する対応力を長期的に観察した上でこう指摘する。
筒香もはじき返された“MLBの壁”
「NPBの外角攻めなら修正して仕留められる。しかしMLBは“打者が嫌がるところ”を精密に突いてくるリーグだ。インハイの厳しいゾーンを高速で攻め続ける投手層の厚さは別次元。村上がそこをどう攻略するかは、まだ誰にも読めない」
その背景には、コロナ禍の2020年からレイズへ移籍したものの結果を残せずドジャース、パイレーツと渡り歩き、メジャー3シーズンを経て昨季から横浜DeNAベイスターズに復帰した筒香嘉智が辿った“MLBの壁”の記憶がある。
村上と筒香を同列に扱うのは確かに乱暴かもしれないが、打者のタイプが似ているという声は米国サイドでは根強い。特に「本塁打で勝負する長距離砲」という分類の中ではスイングの始動の遅さや、スイングアークの大きさは米球団から厳しくチェックされる要素だ。
さらにやや厄介なのは、今季の村上が置かれたヤクルトというチーム状況である。上半身のコンディション不良から復帰後の7月末に今季初ホーマーを放つと驚異的なペースで22本もの本塁打を量産したものの、チームは早々に優勝争いから脱落。投手側の“勝負を避ける配球”が増えたことで、MLB球団が求める「本当の勝負打席」が極端に少なくなった。
ファン感謝イベントでスタンドに手を振るヤクルト・村上宗隆(写真:共同通信社)