高市早苗首相(写真:共同通信社)
高市首相の国会での「存立危機事態」発言(11月7日)に中国が反発し、日中関係が悪化している。このような状況をトランプ大統領は、どのように見ているのか。米中関係の今後を展望すると、日本の危機的状況が浮かび上がってくる。
出口なしの日中関係
日本製水産物の輸入停止、日本への渡航自粛、航空便の減便など、様々な分野に影響が出ている。中国は高市発言の撤回を要求しているが、日本政府はそれに応じる気はない。事態の沈静化には、時間がかかりそうである。
高市発言に関しては、政府は従来の政府見解を見直さないとして、11月25日には、「存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即して持ち得る全情報を総合して客観的かつ合理的に判断する。政府見解は完全に維持しており、見直しや再検討が必要とは考えていない」という答弁書を閣議決定している。
これは、事実上の高市発言撤回である。先の予算委員会で、高市は、「台湾とフィリピンの間の海峡が封鎖されたら、存立危機事態になるか」という岡田克也議員の質問に対して、「戦艦を使い、武力行使を伴えばどう考えても存立危機事態になり得る」と答弁したのであり、明らかに「従来の政府見解」とは乖離しているからである。
事実上の発言撤回であるが、中国はそれを認めようとはせず、中国外務省の報道官は、26日の会見で、「全く不十分だ。ごまかすような手口を使うべきではない」と批判し、あくまでも撤回を求め続けた。
しかし、高市がそれを受け入れれば、政権はもたない。高市の70%という高い支持率は、保守のタカ派、「毅然として中国に立ち向かっている」というイメージがもたらしているからである。
