「江戸の三座」を経営難から救うべく蔦重が考えた話題づくり

 今回の放送でクローズアップされて話題になったのが、「謎の絵師」とされる写楽(しゃらく)である。

 ドラマで定信から蔦重に課せられたミッションは「源内が生きているのではないか」という噂を流すことで、江戸の街で騒ぎを起こすこと。そこからどのように黒幕、つまり、一橋治済を追い落とすのかは今回の放送で明らかにされなかったが、蔦重の仕掛けが重要な意味を持つのだろう。

 そこで、蔦重はこれまでになかった役者絵をプロデュースし、それが源内作だと噂を立てることで、話題づくりをしようと考えた。この頃はドラマでも説明されたように、伝統ある江戸の三座(中村座・市村座・森田座)が経営難に陥っていた。

 人々が度肝を抜くような役者絵を世に出せば、芝居にも客が戻ってきて、かつ、絵も売れる。それが源内作ではないかと大騒ぎになれば、定信からの要望にも応えられると考えたようだ。

 蔦重は、絵師の北尾重政(きたお しげまさ)や北尾政演(まさのぶ=山東京伝)、そして戯作者の朋誠堂喜三二(ほうせいどう きさんじ)や狂歌師の大田南畝(おおた なんぽ)らを巻き込みながら、源内を思わせる「謎の絵師」を作り出すことになる。