『南北相法』(東京藝術大学附属図書館所蔵/出典:国書データベース、https://doi.org/10.20730/100378071)
NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第41回「歌麿筆美人大首絵」では、蔦重と喜多川歌麿が『婦人相学十躰』を売り出すために、知恵を絞る。一方で、城中では松平定信が将軍補佐と奥勤め、勝手掛の辞職を願い出るが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
中山秀征が演じる国学者も「寛政の改革」で処罰された
あまり知られていない歴史人物に触れられるのが、大河ドラマの醍醐味だ。それもテレビでお馴染みのお笑い芸人やタレントが演じるとなると、より身近に感じられたりもする。
大河『べらぼう』では、錦絵『雛形若菜初模様(ひながたわかなのはつもよう)』を描いた絵師・礒田湖龍斎(いそだ こりゅうさい)をお笑い芸人の鉄拳が素顔をさらして演じたことでも話題になったが、そのほかにも、ダチョウ倶楽部の肥後克広が彫師役、3時のヒロインの福田麻貴が日本橋の女将役、コロコロチキチキペッパーズのナダルが表坊主役、有吉弘行が白河藩士・服部半蔵役と、お笑い芸人が続々と登場している。
ネプチューンの原田泰造にいたっては田沼意次の側近・三浦庄司役で多くの放送回に登場しているし、ひょうろくが演じる松前廣年もストーリー上、重要な役どころとなった。
今回の放送でも、誰もが知るタレントやお笑い芸人が登場している。それぞれユニークな役どころでSNSでも反響を呼んだ。
その一人がタレントの中山秀征。歌人で国学者の加藤千蔭(かとう ちかげ)を演じた。千蔭は、江戸町奉行の与力・加藤枝直(えなお)の子として生まれ、父の職を継ぎながら、歌や国学を父や賀茂真淵(かも まぶち)に学んだ。
蔦重はプロデュースした黄表紙3作が好色本にあたるとして、身上半減(しんしょうはんげん)の処罰を受け、財産を半分にされてしまったが、この加藤千蔭も実は、松平定信の「寛政の改革」で煮え湯を飲まされている。
どうも田沼意次の側近だったことから、何かとにらまれたようだ。驕奢な生活をとがめられ、減俸のうえ「閉門100日(門や窓をかたく閉じ、出入りを禁じる)」という処罰を受けているのだ。放送では「ちなみにこの千蔭先生も田沼派で閉門を受けた方です」というナレーションで、簡単に説明がなされた。
「お互い大変でしたね」と、処罰を受けた者同士で、蔦重と千蔭の2人が意気投合したのでは、と想像すると面白い。