中国には西側諸国へのアクセスが不可避

──西側諸国が脅威を感じて輸出規制を強化しても、ロシア、インド、グローバルサウスと新たな世界市場を構築することで、対抗することが可能になってくるのではありませんか?

ユアン:中国は西側市場への依存を減らすことはできると思いますが、少なくとも近い将来においては、西側市場を完全に無視してやっていくことは現実的に不可能です。

 その中で、北京が試みているのは多様化です。

 グローバルサウスとの貿易を深化させ、ロシアとのエネルギー・原材料取引を増やし、東南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ諸国と製造・インフラ整備の分野で連携を拡大する努力を続けています。

 これは確かに西側諸国の輸出規制や関税による衝撃を和らげる効果があり、長期的には中国周辺に非西側諸国の経済ネットワークが密集するようになるかもしれませんが、そこにはまだ限界があります。

 米国、欧州、そしていくつかの主要なアジアの同盟国は、依然として世界の高所得層の消費者と最先端技術の大きなシェアを占めています。

 グローバルサウスの多くは重要なパートナーではあるものの、一人当たりの所得と需要は小さく、西側市場の役割を代替するには至りません。ロシア経済は比較的小規模で厳しい制裁下にあり、インドは多くの点で中国の戦略的競争相手であり、単純な経済圏パートナーには現状ではなりません。

 したがって、中国が西側諸国から単純に背を向け、他国と並行するシステムを構築するような明確な分裂は望めません。むしろ、貿易と技術のエコシステムが部分的に重なる複雑なマーケット構造となる可能性が高いでしょう。

 中国はグローバルサウスへの依存を深めつつも、政治的緊張が高まる中でも、西側諸国の先進市場と技術へのアクセスが中国にはどうしても必要なのです。

──中国の国民は、この5カ年計画について率直にどう考えていると思いますか?

ユアン:5カ年計画に対する「中国人の見方」は一つではありませんが、まずほとんどの人は計画書自体を読んでいないと思います。

 ただ、国民は雇用、住宅、そして日々の物価を通してその影響を感じ取っています。テクノロジー、工場、そして国力について多くを語りながらも、自分たちの生活がどのように楽になるのかが曖昧な計画は、現実離れしたものに感じられるかもしれません。

 都市部の若い中国人に話を聞くと、多くの人が雇用、不動産価格の下落、そして生活費を心配しています。同時に、中国がEV、高速鉄道、宇宙、AIといった分野でリードしていることに国民は誇りを感じ、科学技術大国になるという考えは魅力的に映ります。

 つまり、国の台頭への誇りと、個人の安全に対する不安が入り混じる状況です。ただ、公然とした批判が制限されている体制下では、こうした誠実な声は公の場ではなかなか表に出てきません。