圧倒的に少ない大学の技術職員

 日本生化学会のディスカッションで話し合われた内容は私の実感にも通じるところが多々あった。改善すべき点として人の問題がある。

 例えば、日本の大学には研究を支えるスタッフが不足している。技術職員は研究者20人につき1人という比率だが、これは欧米の主要大学と比べても少ない。テクニシャンと呼ばれる技術職がいて、実験の手技を分担する体制は理想的だ。実験・設備管理・行政対応といった専門職も充実させていくのが良い方向と考えている。

 日本特有の研究室文化にも、課題すべき課題がある。

 日本国内の多くの現場では、伝統的なヒエラルキー構造が強く、研究の方向性やリソース配分をPI(Principal Investigator、研究室の主宰)が一手に握るケースが多い。それでは若手研究者が主体的に研究テーマを立ち上げ、独自のアイデアを試す機会が減ってしまう。

 最近では若手PIを積極的に任命する制度改革も進みつつあるが、サポート体制が乏しいまま権限だけが与えられるケースもあり、若手が「研究・教育・管理のすべて」を一人で抱え込んでしまうという逆効果も生まれている。

 興味深いことに、これまで生命科学分野でノーベル賞を受賞した日本人研究者はほぼ100%が海外での研究経験を持ち、大半がアメリカで研鑽を積んでいる。これは単なる偶然ではない。