吉原(1890年代、提供:MeijiShowa/アフロ)
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 NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第43回「裏切りの恋歌」では、喜多川歌麿が自分以外のパートナーと仕事をしようとしていることを蔦重が知る。一方、老中首座の松平定信は大老の座を狙うが……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

花魁の身請けに上限額を決めた松平定信

 老中首座の松平定信による「寛政の改革」によって、吉原などの遊郭はすっかりにぎわいをなくしてしまったようだ。

 今回の放送は、喜多川歌麿が吉原の花魁(おいらん)の絵を描くところからのスタートとなったが、その様子を見ながら蔦重が「花魁……どことなく地味になりましたね」と漏らすと、遊廓のオーナーである楼主たちからも、羽振りのよい客がいなくなったと嘆く声が相次いだ。

「もう昔みたいにどんどん着物を作ってくれるようなお大尽なんていやしねえのさ」

「今は身請けの上限も500両って決められているし、しけたもんさ」

 実際に松平定信は「寛政の改革」で、高騰する花魁の身請け金を問題視して、セリフにあるように500両(現在の貨幣価値で推計5000万円程度)の上限を設けている。

 確かに、五代目瀬川の身請けに1400両(推計1億4000万円程度)を支払った鳥山検校のような者が現れれば、ちまちまと倹約をするのもバカらしくなってきそうである。

 定信の財政再建への意欲はわかるが、とはいえ、富ある者までお金を使わなくなると、景気は冷え込むばかりだろう。