放置された遺体を住民が運び出す
警察の掃討作戦は短時間で街を戦場に変え、大きな犠牲と深い衝撃を残した。激しい銃撃戦の最中、住民は自宅に閉じ込められ、通学や営業は完全にマヒした。バスが燃やされ、幹線道路は封鎖された。自動小銃93丁を含む銃器120点が押収され、逮捕者も多数出た。
その一方で、丘陵地帯や林の中に放置された遺体を住民が運び出し、広場に並べる様子が報じられた。警察側にも数人の殉職者が出た。検視が追いつかず遺体の身元確認が遅れたため、住民からは「無差別な掃討作戦」「過剰な武力行使」といった非難が相次いだ。
州当局は掃討作戦の標的はCVであり、長期にわたる捜査と逮捕令状の執行が目的だったと説明。違法武器や麻薬の押収、資金源の摘発は今後の治安回復に資するが「誰が標的とされ、誰が巻き込まれたのかの線引きが曖昧」と住民は憤る。
事件の政治的波紋も大きい。COP30の開催で国際社会の注目がブラジルに集まる中、ルラ大統領は治安確保の必要性と人権保護の両立を問われる窮地に立たされている。都市と周縁部の格差と統治不在の空白が犯罪組織を生む温床となっている。