練習の仕方や質が大きく変わった
2025年11月8日、GPシリーズ、NHK杯、男子シングル、佐藤のFSの結果を見て、ガッツポーズをする日下匡力コーチ 写真/長田洋平/アフロスポーツ
加えて、もう1点をあげる。
「(昨シーズンの)世界選手権の前は今までに見たことのないような練習量でした。『もうやめろ』というくらい。自分が止めたのは初めてだなと思ったくらい、練習の量は多かったです。(いまは)質も上がりましたし、そこから自信がついてきましたね」
佐藤も同意する。
「世界選手権の前ぐらいから練習の仕方や練習の質が大きく変わったのではないか、と思います。世界選手権前の練習が今シーズンにつながっているのではないかと思っています」
その背景には、昨年12月の全日本選手権で思いがけない出来に終わり、7位にとどまったことがある。フリー後は過呼吸のような状態で医務室に運ばれる一幕もあった。
試合を終えた翌々日、回復した佐藤は取材でこう話した。
「世界選手権で同じ失敗をしてはいけないと思っています。プレッシャーの中でもいい演技ができるようにしたいです」
悔しさをばねにした佐藤は練習でその思いを実践しながら世界選手権に向かい、6位と成果をあげた。その過程で培った土台が、怪我というアクシデントを乗り越える力となっている。
質の高い練習ができていることは、試合への臨み方にも好影響をもたらしているだろう。
「本番への入り方や6分間練習の使い方が自分の中で成長したなと感じました」
日下コーチの言葉も示唆する。
「怪我を抱えながらいい練習ができていて、その中で自信をつけてそのままいけたのでよかったです」
次の試合となるグランプリファイナルへ向けて、佐藤は言う。
「ファイナルまで少し時間があくので、その中で今回スピンだったり、ステップのレベルの取りこぼしが何点かあったので、そこの部分を詰めて行きたいです」
そしてその先を見据える。
「オリンピックに出ることが目標ではないので、オリンピックに出て、メダルを獲ることが最大の目標です。かなえられるように、ここから頑張っていきたいです」
日下コーチの言葉を借りるなら、「やっぱり大人になった」佐藤駿は、4年に一度の大舞台を見据え、さらなる成長を期して進んでいく。
