米フロリダ州マイアミのビジネスフォーラムに出席したトランプ大統領(写真:ゲッティ=共同)
「気候変動は最大の脅威。もう一つの脅威はトランプ氏」
[ロンドン発]「気候変動は最大の脅威だ。もう一つの脅威はドナルド・トランプ米大統領。街角に立つ大柄な男が手にムチを持ち、胸に『非合理』と書いた札を下げて鉛筆を売る米誌ニューヨーカーの風刺画が昔あった。トランプ氏の貿易政策はまさにそれだ」
2017年ノーベル経済学賞受賞者で米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授(行動科学・経済学)はこう話した。
「ロンドン地下鉄駅構内のバスカー(演奏家)には気が向けば寄付をする。しかしムチを持ち『非合理』と書いた札を下げていたら人の反応は異なる」
米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授(筆者撮影)
「合理性ではなく『非合理』を演出して相手を混乱させ、譲歩を引き出すトランプ氏の政策を支持する経済学者はほとんどいない。デヴィッド・リカードの比較優位を信じているからだ。トランプ氏と側近は経済学の初歩を勉強し直すべきだ。週変わりの関税政策が良いはずがない」
セイラー教授は共著『勝者の呪い―なぜ人は合理的にふるまえないのか(筆者仮訳、The Winner’s Curse: Behavioral Economics Anomalies, Then and Now)』の出版に合わせ、ロンドンの外国特派員協会(FPA)で質疑に応じた。