車両の高効率化で航続可能距離を延ばすスズキの戦略
まずはスズキのビジョンeスカイ。市販車とは異なるコンセプトカーという位置付けだが、実はこのコンセプトを反映させた市販モデルを開発中で、開発チームも組まれている。果たしてどんなクルマを目指しているのだろうか。
「重要なポイントは3つあります。今、軽自動車にお乗りのお客さまが違和感なく乗れること。できる限りの軽量化を図りながら日常用途プラスアルファの航続力を持たせること。そして価格が安いことです」
商品企画担当者は開発意図を語り、こう続ける。
「BEVというと先進性が重要視されがちですが、今の軽自動車にお乗りのお客さまがメーターやスイッチを見て『意味がわからない』と拒絶感を持ってしまうクルマにはしたくないのです。それゆえ先進感に振り過ぎず、日常ユースの使い勝手を高めることに努めています」
次に航続距離。スズキはマイナス極の素材に炭素系材料を使用する現時点では、製造時に大量のCO2を排出するバッテリーの搭載量をなるべく少なく抑える「バッテリーリーン」であることが大切という考えを示しているが、バッテリーの容量が少ないと航続距離や充電性能に影響する。
「軽自動車はシティコミューターと言われることもありますが、特に地方部では意外に長距離も乗られるというケースが多いんです。例えば隣の県のアウトレットモールに行ってみようなどと思うことはよくあることですし、通勤・通学にしても住む地域によってはシティコミューターの範疇には収まりません」(前出の商品企画担当者)
バッテリーリーンは達成したいが、航続距離は犠牲にしたくない。そこで進めているのが徹底的な軽量化だという。バッテリーをむやみに増載するのではなく、車両の高効率化を図ることで航続距離270kmを達成させようというのである。
スズキの軽EVコンセプトモデル「Vision e-Sky」と同社の鈴木俊宏社長(筆者撮影)