ファン待望のモデルは登場せず

 マツダファンが今回期待していたのは、いわゆるコンセプトカーとしてのロータリースポーツではなく、ジャパンモビリティショー2023で登場した「アイコニック SP」ベースで量産化を目指すロータリースポーツのコンセプトモデルだった。自動車メディアやマツダファンはそれを「RX-9 コンセプト」と、期待を込めて呼んでいた。

マツダが「ジャパンモビリティショー2023」に出展し来場者の注目を浴びた「アイコニック SP」。これをベースに、量産化に向けたコンセプトモデルの発表が期待されたが……(写真:筆者撮影)

 アイコニック SPのボディサイズは、全長4180mm×全幅1850mm×全高1150mmであることから、「RX-7の復活」「RX-9の可能性」といった声がマツダファンの間で広がった。

 毛籠勝弘(もろ まさひろ)社長を始めとしたマツダ幹部らはこれまでにも、「アイコニックSPに対するユーザーやメディアの評価を受けて、その次を考えていく」と量産化に向けた考えを示しており、マツダファンの期待は否応なしに高まっていた。

マツダ、ロータリーエンジン開発の歴史

 実際、ロータリーエンジンの開発も着実に進んでいる。2012年にマツダ本社としてロータリーエンジンの量産は終了したものの、ロータリーエンジンの研究開発は地道に続けており、その成果が排気量800ccの「8C」型ロータリーエンジンだ。

ロータリーエンジンに関する技術展示「マツダ ファンフェスタ イン 富士スピードウェイ2025」にて(写真:筆者撮影)

 8Cを発電機として使うプラグインハイブリッド車「MX-30 ロータリーEV」を2023年11月に発売している。

 2024年2月には、次世代に適合したロータリーエンジンの研究開発を加速させるため、当時のパワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部内で「RE(ロータリーエンジン)開発グループ」が復活。マツダの主要市場での規制対応やカーボンニュートラル燃料の活用などを視野に入れた取り組みが始まっていた。

 さらに、同年5月にはマツダ、トヨタ、スバルが共同会見を開き「カーボンニュートラル実現に向け、電動化時代の新たなエンジン開発を「三者三様」を宣言している。

 その際、マツダは8Cを2つ連装(ツインローター)した高出力型パワーユニットを初公開し、これをMX-30 ロータリーEVのように発電機として使うシリーズハイブリッド構想を披露しているのだ。

 こうした一連の流れから見て、マツダファンのみならず、自動車メーカー各社も、今回のジャパンモビリティショーではマツダが「アイコニック SP」をブラッシュアップした量産型RX-9を想起させるコンセプトモデルを発表すると期待していた。

 ところが、蓋を開けてみると、ファンはガッカリしたことだろう。

 登場したのは2035年目標のVISIONであり、ロータリースポーツ量産は事実上、先送りされた形だ。