エリートコースから外れようとする子どもたち
田中:難関とされる学校に進学し、学内でも成績優秀で親からは医師を目指すように言われていますが、本当に興味があることは勉強ではなくなるという女の子は少なくありません。例えば、植物を育てること、コスプレ、モノ作り、ダンス、お化粧やネイル、ファッションなど、そういう方向の自己表現をやってみたいと感じるのは普通のことです。
超優秀なコースを進みながら、途中から別の方向を目指し始める女の子は、かつてはそれほど多くはいませんでしたが、最近はカウンセリングでよく出会うようになりました。受験して有名校に進学する女の子が増えたからだと思います。
親からすれば、せっかくエリートコースを進んでいるのに、そこから外れようとする娘のことを受け入れがたい気持ちや不安が起こると思います。でも、勉強をやめるという選択は、本人が自分のことを自分で決めること、自己決定ができるようになりつつあるいう成長の証しでもあります。
自分が何をしたくて、何がしたくないか。それを見極められるようになりつつあるのは、決して悪いことではありません。
──必ずしも反抗というわけでもないのですね。
田中:親から見たら反抗に見えるかもしれませんね。「せっかくこんなに高いお金を出して塾に通わせたのに」「ここまで応援してあげたのに」という思いはあるでしょう。でも、子どもからすれば、自分の人生を自分で考えたいと思うのは当然です。
さらに、こういうことも言えます。もしも親が不安定だったり、子どもから見て頼りなかったりする場合は、子どもは親の期待に背くことすらできません。
親がうつだったり、家庭内でDVがあったり、離婚しそうだったり、そういうことで親が苦しんでいれば、家庭も不安定になります。そういう状況だと、子どもはヤングケアラーとして、親をサポートする側に回らざるをえなくなる。
そうではなくて「うちの親たちは安定している、自分の幸せを願ってくれている」と、子どもが信頼できるからこそ、子どもは親が望まないかもしれない選択にチャレンジできる。そういう面もあります。
──あるところで勉強をやめる優等生たちは、どの程度、自分の行動に自覚的だと思いますか?