
世界保健機関(WHO)は、孤独や孤立を重大な現代の危機だと訴えている。同機関の推計によれば、孤独に当たる人はグローバルで高齢者の4人に1人、青少年の5~15%に上る。同時に、人とのつながりが健康状態に決定的に作用するとして、孤独は喫煙、肥満、運動不足と同等のリスクであると説明している。
なぜ孤独が健康状態に影響するのか。孤独な人はどうすればいいのか。『つながる技術 人生を豊かにしてくれる大切なこと』(日経BP・日本経済新聞出版)を上梓したつながりの健康研究所(Social Health Labs)主宰のキャスリー・キラム氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──肉体の健康や心の健康に加え、「つながりの健康」もまた重要であると書かれています。
キャスリー・キラム氏(以下、キラム):「つながりの健康」とは、人とのつながりから得られる健康のことです。数十年の研究から明らかになったことは、人間関係やコミュニティの感覚も、健康や安全管理の面でとても重要で、エクササイズや栄養や睡眠と同じように必要なものだということです。
──「つながりの健康が病気を予防して寿命を延ばす」と書かれています。
キラム:人とのつながりを持ち、助け合える関係を築くと、心臓の疾患、脳卒中、糖尿病、認知症、うつなどのリスクが減り、長生きさえすることが分かっています。なぜつながりがこれほど健康を左右するのかというと、人との関わりが身体に物理的に作用するからです。
つながりの対極にあるのは孤独や孤立ですが、私たちの肉体は孤独や孤立を脅威と感じてストレスを受けます。継続的に孤独を感じる状況に陥ると、活力や免疫力が低下します。一方、つながりのある環境に身を置くと、ドーパミンやオキシトシンなどのいわゆる「幸せホルモン」が放出され、身体が活性化してストレス耐性が増す。
つながりには、生活における機能的な効果もあります。強いつながりのあるコミュニティでは、コロナ禍でも感染者や死者の数は少なく抑えられたことが、世界中のデータから明らかになっています。
「通りの向こうで無料のワクチン接種が受けられるよ」「どの薬を飲むべきか一緒に説明を見てあげようか」「医者に連れていってあげようか」など、つながりによって必要な助け合いが可能になったのです。
──「蝶」「壁の花」「蛍」「常緑樹」という、人との付き合い方の4つのタイプについて本の中で説明されています。
キラム:私たちが人とつながる時の好みと振る舞い方を、つながりの「量」と「質」で4種類に分類しました。