「イベントはテーマパークのようなものだ」と中島康博氏は語る(写真:アフロ)
リアルにバーチャル、両者を組み合わせたハイブリッドなど、巷にはさまざまな形態のイベントがあふれている。法人や個人がイベントを開催するケースも数多い。だが、イベントのプロデュースは奥が深い。プロは何を考え、どんなことに気をつけながらイベントを組み立てているのか。
『エクスペリエンスプロデューサーが書いたイベントの教科書 「体験」の「カタチ」をつくる超実践的思考法』(宣伝会議)を上梓した株式会社博報堂プロダクツでエグゼグティブ・エクスペリエンスプロデューサーを務める中島康博氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──エクスペリエンスプロデューサーとはどのようなお仕事ですか?
中島康博氏(以下、中島):私の仕事は「イベントプロデューサー」や「空間プロデューサー」と呼ばれることが一般的です。その中でなぜ「エクスペリエンスプロデューサー」と名乗るかというと、イベントや空間という特定のものを作るばかりではなく、そこで生まれる体験にフォーカスしているからです。
具体的な対象は、イベント、展示会、店舗、ショールームなど、小さなものから大きなものまで、短期的なものから長期的なものまで、リアルからバーチャルまで、かなり広い形態の総合演出をしています。
──この本を読みながら、かなり規模の大きなイベントも手掛けられているという印象を受けました。
中島:クライアントごとにチームを作り、案件ごとに依頼を受けるので、そのクライアントが年間に行う大小さまざまなバリエーションのイベントや施策を手掛けます。
小さなものは、例えば、街頭で行うサンプリングイベントや広報発表会などがあります。広報発表会はテレビなどで見ると一見大掛かりですが、イベントとしては時間も短く来場者の数もそう多くはありません。
いっぽう大きなイベントには、博覧会や自動車業界の展示会などがあります。企業がお客様を招くBtoBの展示会などもあります。
──スタッフとの効果的で効率のいい、抜けのない情報や意思の共有について本書ではさまざまな工夫が書かれています。大きめのイベントの場合、関わるスタッフの数はどれぐらいになりますか?
中島:イベントの前日には、関わるスタッフ全員を集める全体オリエンテーションを行います。大きめのイベントの場合は、200名ほどが参加することもあります。
このミーティングに参加するのは運営に携わる人たちだけですから、演出や造形など、他の関わり方をする方も含めると、さらにその数は倍ぐらいになります。
──全体定例会議、事前定例会議、分科会、商品担当者会議、営業担当者会議、オールスタッフミーティングなど、数々の会議の必要性や意義について説明されています。こうした会議はなぜ重要なのでしょうか?
中島:プロジェクトを開始したら、会議の目的、参加メンバー、会議を開くスケジュールなどを早い段階で決めることがとても重要です。もちろん、そこで決めたスケジュール通りに進めていくことも大切です。
会議の中で大事なことを決めていくので、会議がずれると、決めるべきことが決まらず、全体のスケジュールが後ろにずれてきます。その結果、不必要な調整作業に追われがちになります。
会議を通して、何をいつまでに決めるかも決めます。会議体を設計してその通りに進める努力をすることが、私たちの仕事全体の半分を占めると言っても過言ではありません。会議体とそのスケジュールさえしっかりしていれば、プロジェクトは確実に成功に向かって進みます。
