報道写真家・冲守弘氏から譲り受けたマザー・テレサの写真を説明する玄秀盛代表

 5月18日、新宿歌舞伎町にある日本駆け込み寺の元事務局長がコカインを所持していたとして、麻薬取締法違反(所持)の疑いで一緒にいた女性とともに現行犯逮捕された。その後、警視庁は6月5日にコカインの使用で田中芳秀容疑者を再逮捕している。

 日本駆け込み寺はさまざまな事情を抱える歌舞伎町の悩める若者たちを保護し、必要な支援を与え、安全な生活を送るための手助けをしてきた。助成金を打ち切られたNPO団体はどうなっているのか。玄秀盛代表に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──元事務局長の逮捕後、どのような展開があったのでしょうか。

玄秀盛氏(以下、玄):5月20日は日本駆け込み寺の創立23周年の記念日でした。同じ日に改正風営法が衆院本会議で可決・成立しています(※)。私たちはこの法改正のために、何度も議員の方々と情報交換し、アドバイスしてきました。

※改正風営法:ホストクラブへの規制や罰則強化を盛り込んだ改正風俗営業法。恋愛感情を利用した色恋営業を禁止し、違反した場合は営業停止の行政処分の対象になる。他にも売掛金システムの禁止や性風俗店に女性客を紹介して報酬を得ることの禁止など、複数の禁止事項を盛り込んでいる。

 また私事ですが、5月24日は私の誕生日でした。これだけ祝いごとが連なるうれしいタイミングに、あの5月18日の逮捕があったのです。

 最初に逮捕について知ったのはテレビ局からの電話でした。先に知ったテレビ局が取材で連絡してきたのです。

 その日は、普段なら田中が事務所に来ているはずでした。ところが、事務所に来なかったのでおかしいと思い、彼の様子を見てもらうため、日本駆け込み寺の共同代表の清水葵にアパートに行ってもらっていました。そうしたら人の気配はなかったそうです。

 何かあったのではないかと少し気になりました。私たちの活動ではさまざまなことが起こりますからね。しかしまさかコカインとは。青天の霹靂ですよ。

 そこからしばらく取材ラッシュが続きました。あらゆるメディアが来ました。何人かユーチューバーも来ましたね。

 ざまあみろといった調子で、ホストも殴り込みのように押しかけてきました。「ここでコカイン買えるんか」「駆け込みで寺じゃなくてコカイン寺か」なんてヤジを飛ばしてきてね。危ないので、不本意ながらドアを閉めて鍵をかけました。

 内閣府の職員が来て、立ち入り検査もありました。もちろんあらゆるデータを出しましたよ。「大事なものが入った棚は厳重に鍵をかけてください」など、ガバナンス面の勧告や指導を少し受けました。

 そうこうしているうちに、少しずつ田中が何をしたのか情報が入ってきました。

 田中と一緒に逮捕された女性は、もともとは日本駆け込み寺に相談に来ていた女性で、担当してお世話をしていたのは清水でした。その女性が抱えていた悩みも決着がついてきたので、3月末で様子見期間も終わっていました。すでに我々の手を離れていたのです。

 でも、本人がときどきここへ遊びに来ていました。その時に、その女性がホストと何かあったようなので、田中が相談に乗り始めていました。それが4月頃の話です。