つながりの健康を測る「5-3-1ガイドライン」

キラム:この質問はよく受けます。「1日に1万歩は歩きましょう」「夜8時間は寝ましょう」「一定の量の水を飲みましょう」など、健康に関する他のガイドラインはありますし、そうしたものは有益です。

 つながりの健康に関しても、同じようにガイドラインを求められることがあります。データはそのことを議論する出発点になります。

 私はいくつかの異なるデータから「5-3-1ガイドライン」というものを作りました。毎週5人と交流を持つ。親しい人間関係を3人は持つ。人とのつながりに毎日1時間は割く。これが「5-3-1ガイドライン」です。

 重要なことは、これはあくまでガイドラインだということです。この数字は人によって異なるし、先ほどの4分類のどれにあたるかによっても変わります。

 あなたが「蝶」や「常緑樹」ならば、つながる人の数はもっと増えるでしょう。「蛍」や「壁の花」であれば、数字はもっと少なくなるでしょう。ガイドラインを出発点にして、より自分に合った数を見つけてください。

 別の試みに私が「To-Loveリスト」と呼ぶものもあります。よく知られた「To-Doリスト」は、その日に(あるいは一定期間の中で)やるべきことを書き出していくことです。同じように、あなたにとって大事な人を書き出すのです。

 長いリストになっても、短いリストになっても構いません。重要なことは書き出した人たちのことを考える時間を持つことです。そして、可能であれば日常的に連絡を取る。「書き出して考える」をシステム化することで、つながりを強化する。これはとても助けになると思います。

──「つながるためには自分の弱さや痛みを見せなければならない」と書かれていました。

キラム:さまざまな研究や心理学が明らかにしていることは、人とのつながりにおいては「自己開示」が大切だということです。自分が体験・経験してきたことを開示するのです。自分の内側を少し外に見せる。少しでもいいし、たくさんでもいい。

「自己開示」を経ることで、信頼が生まれ、互いに好意の気持ちが生まれる。相互の関係が生まれ、関係が深まるのです。脆さを見せることは、関係構築やつながりを持つための重要なキーです。

 自分の弱さをさらけ出すのは、言うほど簡単なことではありません。私も何度も繰り返して、ようやくできるようになってきました。もっと若い頃は、親友に対してさえ、自分が抱えている困難を打ち明けることに抵抗がありました。でも、数年かけて練習を繰り返し、できるようになったのです。

 このように深いところを共有すると、弱い自分を見せられるようになり、他の人の弱さも許すことができるようになるのです。

キャスリー・キラム(Kasley Killam)
つながりの健康研究所(Social Health Labs)主宰
カナダ・クイーンズ大学卒、ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。MPH(公衆衛生学修士)。スタンフォード大学、コロンビア大学等において、人のつながりを通したウェルビーイングの向上に関する研究を15年にわたり続ける。つながりの健康に関する第一人者の1人としてグーグル、米国保健福祉省、世界経済フォーラム等の世界的企業・団体と協働し、つながりの健康を向上させるプロダクト、職場、コミュニティづくりに取り組んできた。『ニューヨーク・タイムズ』『サイエンティフィック・アメリカン』『サイコロジー・トゥデイ』『ワシントン・ポスト』等に寄稿している。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。