「中身は男」「女装した安倍晋三」

 日本で「初の女性総理」となった高市政権の誕生は、左派やリベラル派に複雑な反応を迫るものであった。

 リベラル派やフェミニズム論壇は、もちろん女性の政治参加を促し、女性候補者を増やすためにパリテやクォータ制などを提唱してきた。それは自民党とは明確に価値観の異なる「リベラルらしさ」であり、日本政治の人材の多様化に向けて欠かすことのできないものである。

 果たして、自民党は高市早苗氏を新総裁に選び出し、伊藤博文から数えて66人目にして初の「女性総理」が誕生した。そしてそれは、高市首相のタカ派的で保守的な信条からして、左派やリベラル派が望んだのとは違う形での女性総理であった。

 高市総裁・総理の誕生が現実味を帯び始めると、フェミニズム論壇からは「女性なら誰でもいいわけではない」「高市の中身は男」「女装した安倍晋三」というような言説が出るようになった。目の前の変化と自らの立場との整合性を必ずしもつけられないでいる。

安倍首相(右)に提言書を手渡す自民党サイバーセキュリティ対策本部の高市早苗本部長(肩書は2019年5月当時、写真:共同通信社)

 このような反応は、いかなる現状変化にも難癖をつける「保守的」なイメージを抱かせるものではないだろうか。

 もちろん、選択的夫婦別姓への消極姿勢など、高市首相の思想には私も共感しない。しかし、日本政治における「ガラスの天井」を破った意義は大きく、その点は与野党を超えて率直にポジティブなものと受けとめられるべきであろう。

 そしてまた、いかに保守的な政治家といえども、高市総理の実現は、「リベラルな女性首相」の誕生にとってもその一里塚になるものではないだろうか。