自民党の高市総裁(写真:共同通信社)
(渡辺 喜美:元金融担当相、元みんなの党代表)
政局で問われる政治家の「反射神経」
公明党の連立離脱宣言以降、高市政権の誕生に暗雲が垂れ込めていたが、日本維新の会との連立協議が突如始まり、17日には「大きく前進」して終了した。
維新は、国会議員定数1割削減や企業団体献金の禁止、食料品の2年間消費税ゼロなどを主張する。本稿執筆時点(18日)ではそれぞれの主張の行方は不透明ながら、高市政権の誕生はほぼ確定した。
自民・維新の間には「閣外協力」案も浮上しており、仮に連立が成立に至らなくとも、維新が野党連合に乗ることはない。従って玉木首班は事実上ついえた。玉木氏は維新に対し「自民と組むなら早く言ってよ」と恨み節である。
国民民主党の玉木代表(写真:UPI/アフロ)
こうした魑魅魍魎の政局で問われるのは、政治家の「反射神経」である。それは、奇怪な生き物と言われる政治をとっさに分析する「直感」、人心がどうなっているかを判断する「実感」、歴史観や宗教観を土台にした羅針盤である「大局観」の3要素からなる。
反射神経を研ぎ澄ますには、あくまで冷静に、マスコミに踊らされず、虚栄心を払拭しなければならない。権力を握ることは悪魔と手を結ぶこと。熱狂に動かされる「心情倫理」ではなく、結果に対し責任を取る「責任倫理」が不可欠だ。
権力追求は政治家にとって当たり前。それが自己陶酔に陥ると政治に対する冒瀆が始まる(M.ウェーバー)。
玉木氏は、野党連合の不安定な玉木内閣を作るより、高市内閣で副総理兼財務大臣になった方が基礎控除引き上げ等の減税を実現できる可能性が高いという計算はしなかったのだろうか?
多党化の中で理念と政策の一致に基づく「政党ブロック」を形成することにより政権交代・政界再編を行う慣行を確立するには良い試練だったと思う。
高市内閣となった場合、直ちに衆議院解散を行い、自民党が単独過半数を確保する可能性がある。しかし、あと3年近く選挙がない参議院でも過半数をとって安定政権を作るためには、自公に代わる政党ブロックが必要となる。