55号本塁打を打ったドジャースの大谷翔平選手(写真:AP/アフロ)
目次

 (田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 メジャーリーグ、ドジャースの大谷翔平選手がレギュラーシーズン最終戦で自己最多を更新する55本塁打をマークした。惜しくも3年連続の本塁打タイトルに、わずか1本届かなかった。大谷選手は前日の試合を休養に充てたいチーム方針に納得。チームも大谷選手も強引に個人のタイトルにこだわる様子はなかった。

 日本では過去、味方選手のタイトル争いを援護するための露骨な敬遠攻めなどが物議を醸すことも多かった。今季は、日本ハムの新庄剛志監督が最多安打のタイトルがかかる清宮幸太郎選手を残り3試合から1番で起用する“親心”をみせる。

 チームの順位が決まった後の消化試合をどう戦い、ファンを楽しませるか。個人タイトルに固執するよりも、選手はもちろん、ファンもポストシーズンに向けて意識を切り替える——。ドジャースや大谷が示したメジャー流の姿勢の方が、いさぎよくないか?

大谷よりチームを優先したドジャース

「全員に休みは必要だし、本人とも話して納得してもらった」

 日刊スポーツの9月29日付記事によれば、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は9月27日のマリナーズ戦欠場の意図をこう話した。大谷選手にとっては33試合ぶりの完全休養となった。シーズン最終戦で本塁打を放ち、結果的にはあと1本でタイトルを手中に収められるかもしれない、という状況だった。

 大谷選手が休養したこの日の試合を含めて、ドジャースのレギュラーシーズンは残り2試合だった。大谷選手は、ナ・リーグの本塁打争いのトップ、カイル・シュワーバー選手を2本差で追っていた。

 一方で、地区優勝を決めているチームには、10月1日から熾烈なポストシーズンが待っている。もちろん、メジャーで3年連続の本塁打王というタイトルは簡単に取れるものではないが、休養することなく、1打席でも多く打席に立つという選択肢はなかったのだろうか。

 同記事によれば、ロバーツ監督は「トミー(エドマン)を守備につかせず、打つ機会を与えたかった。彼(大谷選手※筆者追記)は、打席が必要なチームメートに与えてほしいと言ってくれた」と経緯を説明している。

 大谷選手の代わりに「1番・DH」に入ったエドマン選手は今季、右足首のけがもあって打率こそ2割台前半だが、スポーツ報知は、内外野を守れるユーティリティー選手として欠かせない存在だと報じる。ポストシーズンを見据えたチーム事情が背景にあり、中日スポーツの記事によれば、ロバーツ監督は大谷選手の本塁打王について「本人は気にしていないと思う。彼は間違いなくMVPなんだから」と語ったという。