個人のタイトルもチームあってこそ
野球情報サイト『BASEBALL KING(ベースボールキング)』の記事によれば、9月27日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター』(ヤクルト対広島)で解説を務めた谷繁氏は、「僕もレギュラーをとって何年かした時に消化試合で、思い返すと、あの時にもうちょっと出ていれば、たとえばヒット1本、2本打っていた可能性もある。試合数ももしかしたら3021ですけど、もっといっていた。あとで考えると、あの時に出ておけばよかったなと思うんですよ。出られるんであれば、試合に出るべきだと思います」と主張した。
通算成績はシーズン毎の数字の積み重ねであり、谷繁氏の訴えには一定の説得力がある。プロ野球の個人タイトルや通算成績は、引退後に評論家に転身した際、言葉に説得力を持たせる肩書きとしても重宝される。
一方で、新庄氏が清宮選手の起用に際して「これで獲ったとしても」と話したように、タイトルはチーム成績に反映されてこそ重みが出る、との考えもある。同時に、後味の悪いタイトル争いは決してファンも喜ばない。
メジャーはレギュラーシーズン終了から、ポストシーズンまでの日程間隔がほとんどなく、すぐに新たな戦いへチームの士気を高めていく。そのことも個人タイトルへの意識の差に出ているのかもしれない。何より、地区優勝に貢献した大谷選手の55本塁打の価値は決して揺らぐことがない。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。
