メジャー流の消化試合の戦い方

 記事では、ロバーツ監督がそもそも、この質問にあまりピンときていない様子や、メジャーが、日本のように終盤のタイトル争いで個人を優先して起用するという考えがあまりないことも紹介している。

 大谷選手は欠場した試合前にブルペンに入り、約30球を投じた。サンケイスポーツの9月29日付記事は、ポストシーズン最初のカードとなるワイルドカードシリーズ第3戦に先発する可能性が高まったと報じた。意識はすでにポストシーズンに向いていた。

 今季の大谷選手は打撃だけでなく、先発投手としても復帰。投打の二刀流として完全復活への足掛かりをつかんだシーズンだった。地区優勝を飾った直後には「ここからは本当に個人の成績よりもチームの成績が一番大事」とも述べている。

 ドジャースはシーズン終盤、パドレスとの地区優勝争いを繰り広げつつ、ポストシーズンも見据えていた。右肩痛のため、マイナーで調整中だった佐々木朗希投手もメジャーへ復帰させて、日米を通じて初となる救援のマウンドに送り出した。不調が続くブルペン陣のテコ入れを目的とし、これから始まるポストシーズンで中継ぎとしての適性も見極めた。

 ポストシーズンには、ア・リーグ、ナ・リーグのレギュラーシーズンの各地区優勝チームに、2位以下で勝率上位3チーム(ワイルドカード)ずつを加えた計12チームがワールドチャンピオンを目指して進出する。ポストシーズンを前に、いかに万全を期すか。そこに、個人タイトルを天秤にかける余地はないということなのだろうか。

 在米のMLBジャーナリスト、山田結軌氏は筆者の取材に「メジャーでも、常に個人タイトルよりポストシーズンということはない」と断った上で、「特にドジャースは豊富な資金でスター選手を集め、ファンは地区優勝は当たり前と考えている。ポストシーズンを勝ち進んでいかなければ『ファンやメディアから評価されない』という背景がある。大谷選手には今季の二刀流の運動量や消耗を考慮した上で、休養という判断になったのだろう」と語った。ドジャースにとっては、人気の大谷がチームにいてもあくまで個人タイトルは二の次で、ファンからの絶大な支持はチーム成績の上に成り立つということなのだろう。

 他方、日本ではメジャーとは対照的なチームの姿勢が目立つ。