BYDの世界戦略車「シーライオン7」の大きな特徴
シーライオン7のモデル概要について簡単に触れておこう。BYDが世界戦略車として開発したミッドサイズクラスの電動クロスオーバーで、車体サイズは全長4830mm×全幅1925mm×全高1620mmと大柄。車名に「7」とあるが、定員7名ではなく2列シート構成の5人乗りだ。
シーライオン7のサイドビュー。全高1620mmはミッドサイズクロスオーバーの中ではかなり低いほう。クーペSUVなどと呼ばれるフォルムである(筆者撮影)
シーライオン7のリアビュー(山口・下関北方にて響灘をバックに筆者撮影)
パワートレインは2種類でRWD(後輪駆動)が最高出力230kW(312馬力)の電気モーター1基をリアアクスルに搭載。AWD(4輪駆動)はそれに加えてフロントアクスルにも160kW(217馬力)の電気モーターを備える。
バッテリーパックはユーザブル(使用可能)容量82.56kWhで、セルは長い板状のBYD内製リン酸鉄リチウムイオン電池「ブレードバッテリー」。定格電圧3.2Vのセルを172個直列つなぎすることで総電圧は一般的な350~400Vを大幅に超える550Vを得ている。俗に言う「800Vアーキテクチャ」という高電圧型である。
装備はカーナビ&コネクティビティ、「ヴィーガンレザー」と称するポリウレタン系合成皮革のトリム、固定式グラストップ、インテリアイルミネーションなどが豊富。RWDとAWDの間に駆動系以外の装備差はない。
シーライオン7の前席。シートやドアトリムなどの素材はヴィーガンレザーと称する非生物系マテリアル(筆者撮影)
天井にはサンシェード付きグラストップが備わる。開閉はできないが開口面積は大きい(筆者撮影)
テスト車は312馬力のRWD。ルートは東京─鹿児島の周遊で、総走行距離は4583.3km。コンディションは猛暑の晴天から洪水を伴う豪雨、台風など、実にバリエーション豊かだった。
まずシーライオン7のおおまかな所感を箇条書きにしてみよう。
①世界戦略車ではあるが中国のユーザーがいかにも好きそうな派手なインテリアイルミネーションが装備されるなど、作りたいように作ったという印象
②動力性能は出力の低いRWDでも十分以上に満足できる水準だった。1名乗車時の0─100km/h(メーター読み102km/h)加速のGPS計測値はメーカー公称値をやや上回る6.5秒
③操縦性、ライドフィールは同クラスのセダンモデル、シールと大きく異なり、応答性より車両安定性と高速直進性を重視したSUVライクなもの
④高温環境を含め充電パフォーマンスは良好で、バラつきもほとんどなく安定していた
⑤静粛性、乗り心地はかなり作り込まれており、快適。車内は広大でスペース的には申し分ないが、後席の着座位置が低く、背が低い乗員にとっては閉所感が強め
⑥運転支援システムは煮詰めが甘く、対面通行の高規格幹線道路などシステムが苦手とする環境ではストレスを覚える
シーライオン7(日本初の本格的なロケット発射場、内之浦宇宙空間観測所のパラボラアンテナをバックに筆者撮影)