上空から見たシリコンバレー中心部(ahsing888によるPixabayからの画像)
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 米IT大手によるAI開発競争が、米シリコンバレーのイノベーション文化そのものを揺るがす新たな局面に入った。

 米メタがAI部門の度重なる再編で開発体制の再構築を急ぐ中、米マイクロソフトや米グーグルも含むこれら巨大テック企業は「リバース・アクハイヤー(reverse acquihire=逆アクハイヤー)」と呼ばれる異例の手法で、スタートアップ企業からトップ人材のみを次々と引き抜いている。

 この動きは短期的な覇権争いには有効だが、業界の成長を支えてきた「ハイリスク・ハイリターン」の文化を破壊し、長期的には自らの首を絞めかねない危険性をはらんでいる。

メタ、AI部門の再編続く 開発体制の構築急ぐ

 AI開発競争でマイクロソフトやグーグルとしのぎを削るメタが、開発体制の再構築を急いでいる。

 同社は6月、マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)主導で、人間を超える「超知能(スーパーインテリジェンス)」開発を目指す新部門「Meta Superintelligence Labs (メタ・スーパーインテリジェンス・ラブズ、MSL)」を設立したばかり。

 しかし、米メディアのジ・インフォメーションが8月15日に報じたところによると、同社はこの新部門をさらに4つのグループに分割する再編を計画している。これは過去半年で4度目の大規模な組織変更となる。

 背景には、4月に発表した最新大規模言語モデル(LLM)「Llama 4」が競合に比べて性能が期待を下回ったことへの強い危機感があるとされる。

 ザッカーバーグ氏は自らトップ研究者に巨額報酬を提示して採用の先頭に立っており、矢継ぎ早の組織再編は、開発を加速させたいという強い意志の表れとみられる。

 英ロイター通信によれば、メタは米南部ルイジアナ州のデータセンター拡張に290億ドル(約4.3兆円)を投じるなど巨額の設備投資を続けており、最適な開発体制の構築を模索している。