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世界のM&A(企業合併・買収)市場が活況を呈している。
英調査会社ディールロジックの集計によると、今年1月から7月までのM&A総額は2兆6000億米ドル(約380兆円)に達し、コロナ禍で金融緩和マネーが市場にあふれた2021年以来の高水準を記録した。
年初に懸念された地政学リスクや米国の保護主義的な通商政策への警戒感を、企業の「成長への意志」と「AIの台頭」という2つの大きな潮流が乗り越えた形だ。
狙いは「成長」、AIが競争を加速
活況の背景には、企業の強い成長意欲がある。
英ロイター通信によると、会計事務所・コンサルティング大手、英アーンスト・アンド・ヤング(EY)の専門家は「現在のディールは成長が最大の動機であり、この傾向は強まる一方」と分析する。
特に、急速に進化するAI分野での主導権争いが、企業の背中を押している。
データセンターの冷却技術を持つドイツ企業を韓国サムスン電子が買収した案件や、AIによるサイバー攻撃の脅威増大を背景とした、米パロアルトネットワークスによるイスラエル同業の大型買収は、その象徴的な動きと言える。
自社の事業領域を拡大し、新たな技術を取り込むことで競争優位を確立したいという狙いが鮮明になっている。
主役はハイテク、PEファンドも復帰
M&Aの主役も変化した。
パンデミック後はヘルスケア分野が市場を牽引したが、ここ2年はコンピューターや電子機器などハイテク分野の案件が米国や英国で急増している。
米鉄道大手ユニオン・パシフィックによる同業買収といった伝統産業での超大型案件も存在するが、市場の関心と資金はテクノロジー分野へと明確にシフトしている。
これまで高金利などを背景に様子見を続けてきたプライベートエクイティ(PE、未公開株)ファンドも市場に復帰。
米ドラッグストア大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの非公開化や、英科学機器メーカーの買収合戦などを仕掛けるなど、ディール活動を活発化させている。