シンガポールに本部を置く調査会社カナリスがこのほど公表したスマートフォン市場リポートで、米中の地政学的対立が世界のサプライチェーン(供給網)と市場競争の構図を大きく塗り替えている実態が浮き彫りになった。
中国市場では、中国・華為技術(ファーウェイ)が1年3カ月ぶりに首位を奪還。一方、米国市場では関税リスクを背景に、初めてインド製スマホが輸入量のトップを占めた。
【中国市場】補助金効果一巡、ファーウェイが復権
2025年4~6月期の中国スマホ市場は、全体の出荷台数が前年同期比4%減の6780万台と縮小した。
カナリスは、年初の全国的な補助金プログラムによる需要の押し上げ効果が一巡し、その反動が出たことが主な要因だと分析している。
こうした市場環境で、ひときわ存在感を示したのがファーウェイだ。
出荷台数を前年同期比15%増の1220万台に伸ばし、市場シェア18%で2024年1~3月期以来の首位に返り咲いた。
米国の制裁により一時は事業が危ぶまれたが、自社開発OS「鴻蒙(ホンモン、英語名はハーモニー)」を搭載した新製品「nova 14」シリーズの市場投入などが奏功し、独自のエコシステム(経済圏)を着実に拡大。力強い復活を印象付けた。
2位は中国vivo(ビボ)の1180万台(シェア17%)、3位は中国OPPO(オッポ)の1070万台(同16%)と、国内勢が続いた。
4位には1040万台(同15.3%)の中国・小米(シャオミ)が入り、同社は8四半期連続でプラス成長を達成した。
一方、米アップルは1010万台(同14.9%)で5位。出荷台数は前年同期比で4%増加し、2023年10~12月期以来のプラス成長に転じた。
これは、中国の電子商取引(EC)大手各社が6月の大型商戦「618」に合わせて実施した「iPhone 16」シリーズの大幅値引きや、アップル自体による下取り価格の引き上げといった「戦略的な価格調整」が需要を喚起した結果で、米CNBCもこの価格戦略が奏功したと報じている。
しかしアップルが、ファーウェイをはじめとする地場メーカーとの熾烈な競争に直面している状況に変わりはない。