トランプ米政権が7月下旬、AI分野における米国の優位性を確固たるものにするための包括的な「AI行動計画(AI Action Plan)」を発表した。
米国内では規制を大幅に緩和して技術開発とインフラ投資を加速させる。対外的には同盟国への技術輸出を官民一体で進め、世界市場で米国基準の主導権を握る狙いだ。
軍事・経済の両面で台頭する中国への強い危機感を背景に、産業界の全面的な支持も取り付けた。AI開発競争での勝利に向けた国家戦略を鮮明にした形だ。
米政府、「AI競争勝利」へ行動計画
7月23日にホワイトハウスが発表した行動計画は90以上の政策項目を盛り込み、①「イノベーションの加速」、②「米国のAIインフラ構築」、③「国際外交・安全保障での主導」、を3本柱に据える。
ドナルド・トランプ大統領は同日、計画の第一歩として、データセンター建設の許認可迅速化や、米国製AI技術の輸出促進に焦点を当てた大統領令に署名した。
行動計画には、政府が調達するAIから思想的偏向を排除する方針も盛り込まれた。
計画の核心は、AI開発の足かせとなり得る規制の徹底的な撤廃だ。
連邦取引委員会(FTC)などにAIの発展を阻害する規制の洗い出しと撤廃を指示。州レベルの規制についても、連邦政府の資金配分で不利に働く可能性を示唆し、国全体で開発しやすい環境を整える。
同時に、AI開発に不可欠なインフラ、特にデータセンターの建設を加速させる。
許認可手続きを簡素化・近代化するほか、連邦政府が所有する土地の活用も視野に入れる。電力不足が懸念されるなか、エネルギー供給の円滑化も図る。
対外的には、同盟国や友好国に対し、半導体などのハードウエアからAIモデル、ソフトウエアまでを一体化した「フルスタック」での輸出を商務省と国務省が主導する。
米国輸出入銀行なども活用し、世界に米国製技術の供給網を広げることで、事実上の技術標準を握る構えだ。
大統領府科学技術政策局(OSTP)のクラツィオス局長は「米国のイノベーション能力を急加速させ、AI時代において米国の労働者と家庭が繁栄することを確実にする」と計画の意義を強調。
AI・暗号資産担当高官のデービッド・サックス氏も「世界経済を変革し、パワーバランスを変える革命的技術」とAIを位置づけ、「AI競争での勝利」が米国の経済・軍事両面での指導力を維持するために不可欠だと述べた。