米アップルは今月9日、中国・遼寧省大連市の直営店「Apple Store」を1つ閉鎖した。2008年に同国で最初の直営店を開設して以来、店舗閉鎖に至るのはこれが初めてだ。
アップル側は、入居する商業施設のテナント流出を理由に挙げるが、この動きは単なる一店舗の統廃合にとどまらない。
背景には、消費マインドの冷え込みという市場の大きな転換点と、激しさを増す中国国内ブランドとの競争がある。
現地ブランドとの熾烈な販売競争
閉鎖したのは、大連市の商業施設「百年城(パークランド・モール)」内の店舗。
米ブルームバーグ通信などによると、このモールでは近年、コーチ(COACH)やヒューゴ・ボス(HUGO BOSS)といった海外ブランドの撤退が相次ぎ、運営会社も変わるなど、苦戦が伝えられていた。
アップルは「複数の小売業者が撤退したことを受けた決断」と説明している。
閉鎖店舗の従業員には、市内で営業を継続する店舗「大連恒隆広場(オリンピア66)」など、他店での勤務機会が与えられるという。
しかし、この店舗閉鎖が注目されるのは、アップルが中国市場で直面する厳しい現実を反映しているからだ。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NY Times)によると、2024年の同国での総売上高は669億5000万米ドル(約9兆9000億円)で、ピークだった2022年の742億ドルを10%近く下回った。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)も、アップルが現地ブランドとの熾烈な競争に直面していると報じている。
象徴的なのは、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の復活だ。
シンガポールの調査会社カナリスによると、2025年4〜6月期の中国スマートフォン市場で、ファーウェイは市場シェア18%を獲得し、1年3カ月ぶりに首位に返り咲いた。
米国の制裁を機に本格展開した独自OS「鴻蒙(ホンモン、英語名はハーモニー)」を搭載した新製品などが支持を集めた。
一方、アップルのシェアは約15%で5位。6月の大型商戦での大幅な値引きで一時的に販売を伸ばしたものの、国内勢に押される構図は変わっていない。