テスラは7月22日、充電中に食事などが楽しめる娯楽施設「テスラダイナー」をロサンゼルスにオープンした(写真:AP/アフロ)
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 電気自動車(EV)大手、米テスラの「顧客忠誠度(ブランドロイヤルティー)」が、この1年で急落したことが、米S&Pグローバル・モビリティの調査で明らかになった。

 このロイヤルティー率は、あるカーブランドのオーナーが次に車を買い替える際、再び同じブランドを選ぶ割合を示すものである。

 テスラはこの指標で長年、米自動車業界の首位を独走してきたが、現在は業界平均レベルまで落ち込んだ。

 背景には、イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)の政治姿勢に対する反発があるとみられ、環境意識の高い顧客層の一部が離反した可能性が指摘されている。

明らかになった実態:首位から転落、顧客獲得力も鈍化

 S&Pグローバルが全米の車両登録データを分析したところ、テスラのロイヤルティー率は、2024年6月に73%でピークに達した。

 しかし、マスク氏がトランプ氏への支持を表明した翌7月から急降下を始め、今年3月には49.9%と、業界平均を下回る水準まで落ち込んだ。

 5月には57.4%にまで回復し、トヨタ自動車とほぼ同水準になったものの、米ゼネラル・モーターズ(GM)のシボレーや米フォード・モーターには及ばない状況だ。

 S&Pグローバルのアナリスト、トム・リビー氏は「これほど短期間での急激な低下は前例がない」と驚きを示す。

 他社からの顧客獲得力も大きく変化した。

 2024年7月以前の4年間、テスラは他社に流出した顧客1世帯に対し、新たに平均5世帯近くを獲得していた。

 この比率は今年2月以降、(顧客1世帯に対し)2世帯未満にまで低下した。

 テスラから顧客を奪ったブランドは多い。例えば、米新興のリビアン・オートモーティブ、スウェーデンのボルボ・カーズグループのポールスター(Polestar)、ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)グループの高級車ポルシェ、GMのキャデラックなどである。