ニューラルネットワークの欠点を克服できれば大幅なコスト削減につながる(Sayedur RahmanによるPixabayからの画像)
目次

 米アマゾン・ドット・コムが、AIの信頼性を飛躍的に高める新技術「ニューロシンボリックAI(Neurosymbolic AI)」の本格導入を進めていることが、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道で明らかになった。

 これは、近年のAI技術の主流である「ニューラルネットワーク(neural networks)」が抱える、事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」という根本的な課題を克服する試みだ。

 同社は既に、このハイブリッド技術をショッピングアシスタントや最先端の倉庫ロボットに応用し始めている。

 AI活用の精度向上とコスト削減を両立させることで、競争優位性を確保する狙いだ。

AIの限界を突破するハイブリッド技術

 米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」が登場して以来、AI開発は膨大なデータを学習してパターンを認識するニューラルネットワークが主流だった。

 しかしこの手法は、時に不合理な自信を持って重大な誤りを犯すという弱点を抱える。

 アマゾンが導入するニューロシンボリックAIは、このニューラルネットワークの統計的な予測能力と、論理的なルールに基づいて真偽を判断する「記号推論(symbolic reasoning)」を組み合わせたハイブリッドアプローチだ。

 すなわち「Neuro+Symbolic」である。

 アマゾンのバイスプレジデント兼ディスティングイッシュド・サイエンティストのバイロン・クック氏は、「コード化できるあらゆる問題に、リアルタイムかつ大規模に適用できる」と述べ、この技術の可能性を強調した。

 記号推論を応用することで、AIの応答が特定のルールや事実(例えば、企業の返品ポリシーや科学的法則)に準拠しているかを検証できるため、その信頼性を大幅に高めることができる。