iPhoneを操作するトランプ大統領(5月23日、写真:ロイター/アフロ)
まもなく発表される新型「iPhone 17」。
その生産の背景には、米中対立を回避し、サプライチェーン(供給網)の多様化を急ぐ米アップルのしたたかな戦略がある。
先月、同社がインドでの生産体制を大幅に拡大する計画が報じられた。しかしその直後、米政権はインドの対ロシア関係を問題視し、高率関税を発動。
アップルの「脱中国依存」は、米印関係という新たな火種を抱え、複雑な様相を呈している。
新型iPhone、初回生産から「インド製」
8月中旬、米ブルームバーグ通信は、アップルがまもなく発表するiPhone 17について、米国向けモデルの全4機種を発売当初からインドで生産・出荷する体制を整えたと報じた。
これまで新型モデルの生産は中国が先行し、インドでの生産は数カ月遅れて始まるのが通例だったが、今回初めて、最上位のProモデルを含む全ラインアップが初回生産からインドでも行われることになった。
この計画を支えるため、アップルはインド国内の生産拠点を5つの工場へと拡大。
これには、インド大手財閥タタ・グループや、長年のパートナーである台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が最近稼働させたインド新工場も含まれる。
関係者によれば、今後2年間でインドにおけるiPhone生産の最大5割をタタ・グループが担う見込みで、インド企業の存在感が急速に高まっている。
このインドへの生産移管は、アップルが長年進めてきたサプライチェーンの「脱中国依存」が本格的な段階に入ったことを示す動きだ。
主な狙いは、トランプ政権下で激化した米中対立に伴う関税リスクを回避することにある。
実際にその効果は数字にも表れており、今年4月から7月までの4カ月間で、インドからのiPhone輸出額は75億ドル(約1.1兆円)に達した。
これは前会計年度全体の輸出額170億ドルの半分近くに迫る勢いであり、生産シフトが猛スピードで進んでいることを物語っている。