日本酒を知らなかったからこその新商品開発
内に向けて施設・環境整備と組織改革を進めるとともに、外に向けて進めてきたのが、新商品開発と新たな商流の開拓。その代表格が、貴和子さんの発案で誕生した無濾過生原酒シリーズの「innocent」だ。
2022年に菊の司酒造から発売されたinnocentシリーズは精米歩合に応じて、40、50、60をラインナップしている。写真は精米歩合40% 純米大吟醸の「kikunotsukasa innocent 40」(撮影:榊 水麗)
「日本酒の勉強を続ける中で私が魅了されたのが絞りたての生酒でした。中でも菊の司の無濾過生酒はフルーティーでとびきりに美味しかった。日本酒初心者の私がこれほど好きだと思えるお酒なら、きっとこれを好きになる人はもっといるはず! それが、innocentのスタートでした」
蔵人たちと幾度もディスカッションを重ね、妥協することなく繊細な生酒の味と品質をコントロールするとともに、ボトルデザインも貴和子さん自身が手掛けた。低い温度に保つ必要がある生酒のため、光から酒を守るために黒いボトルを採用。ワインクーラーなどでボトルが濡れてもルックスが変わらないように白い文字をボトルに直接プリントしている。海外市場も念頭に入れ、文字はアルファベットと漢字の両方を使用した。
2023年には、「innocent 40」が香港Oriental Sake Awards【生酒部門 Gold】、シンガポール酒チャレンジ【Silver】など海外のアワードを受賞。2024年6月・7月にはANA国際線ビジネスクラスの機内サービスに採用された。