
(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)
参院選で議論にもならない行政DX
参院選を前に、「給付だ、減税だ」と世間がだいぶ騒がしくなってきた。どちらにしても現場における事務処理やシステム対応の難しさを棚上げし、大衆にアピールし選挙に勝つためにはなりふり構わぬといったところだ。
これまでも給付・減税議論のたびに、迅速に給付・減税できる給付付き税額控除制度が提案されてきたものの、喉元過ぎれば何とやら。選挙が終われば現場に丸投げ、後は一顧だにしない。まさに票目当てのポピュリズム合戦の様相を呈している。
しかし、批判したところで、民主主義はその本質的な特性としてポピュリズムを内包しているから厄介だ。大衆の支持を得るために、時には合理性や将来性も犠牲にされる。
今回の選挙は参院選だが、参議院はより長期的な視点で国政を審議する「良識の府」という役割を担う。ポピュリズムに流されず大局的な観点から国政を担ってほしいと期待しているが、これは物価高対策だけでなく行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)にも言えることだ。
現在の我が国において行政DXは喫緊の課題であるが、思うようには進展していない。行政DXを推進する上で、政治の果たす役割は極めて重要だが、今回の各政党の公約や主張を眺めても、残念ながら行政DXに鋭く切り込んだものは見当たらない。
本稿で指摘したいのは、「アナログ信仰・ポピュリズム」とでも言うべき政治的ポピュリズムとそれに起因するアナログ信仰が、日本の行政DXを著しく阻害しているという事実だ。