オープンAIのサム・アルトマン氏(右)、左はワールドコインのCEO兼共同創設者であるアレックス・ブラニア氏(2025年12月11日撮影、写真:REX/アフロ)
目次

(英エコノミスト誌 2026年1月3日号)

史上最速クラスの成長を遂げている企業が危険な立場に立っている。

 米オープンAIの最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏は、さしずめ一輪車に乗った奇術師だ。

 最新の人工知能(AI)モデルで駆動する全知のチャットボットを作るだけでは飽き足らず、観客を夢中にさせておくためにお手玉を次々に放り上げてきた。

 カスタム半導体? もちろん大丈夫。

 電子商取引? どうぞどうぞ。

 ビジネスコンサルティング? お安いご用です。

 消費者向けの端末? いいですとも。

 それと同時に、アルトマン氏は帽子を差し出す手をずっと空けておかなければならない。ショーの運営費が日ごとに高くなっているからだ。

 漏れ伝わるところによると、オープンAIは2026年に170億ドルもの現金を費消すると見込んでいる。2025年の90億ドルから大幅に増える計算だ。

 また、その後も3年連続で損失が蓄積されていく見通しだ(図1参照)。

 投資家から集めた資金の累計はすでに600億ドルを超えており、私企業としては過去最大だ。

 しかもそのほぼすべてを2022年の終わり以降、すなわち生成AI「Chat(チャット)GPT」の発表によって無名のAI研究所だった同社が一躍脚光を浴びた時から集めている(図2参照)。

図1:上、図2:下

莫大な資金が支えた比類なき高成長

 アルトマン氏の資金調達欲が満たされているとはとても言えない。オープンAIに近い情報筋によれば、同社が2026年にも資金を調達することは「ほぼ確実」だ。

 直近では昨年10月に、企業価値を5000億ドルと評価されたうえで大型の資金調達を実施したが、報じられるところによれば、次回は8300億ドルという企業価値評価を得て1000億ドルの調達を目指している。

 これとは別に、アマゾン・ドット・コムから最大100億ドルの出資を受ける話も出ている。

 オープンAIとマイクロソフトによる排他的な関係が解消されたことで、クラウドコンピューティングの分野でマイクロソフトの最大のライバルであるアマゾンとの協力が視野に入ってきた格好だ。

 エヌビディアも、オープンAIに最大で1000億ドル、100億ドル単位で段階的に出資するかもしれないと表明している。エヌビディア製品の購入費用の一部に充ててもらうのが目的だ。

 アルトマン氏が様々な局面でその考えに水を差してきたとはいえ、公募増資や新規株式公開(IPO)も検討していると噂されている。

 オープンAIは前例のない規模の資金調達を行うことで比類なき高成長を実現した。2023年には売上高が10億ドルを突破した。2025年にはすでに130億ドルに達し、同年末までに年率換算で200億ドルのペースに増加したと報じられている。

 これと同じ水準に到達するのにグーグルは5年、フェイスブックは6年かかった。