
(榎並 利博:行政システム株式会社 行政システム総研 顧問、蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員)
「戸籍へのフリガナ記載について御確認ください」
マイナポータルからこのような通知を受け取った方も多いだろう。2025年5月に戸籍法改正を含む改正マイナンバー法が施行され、「フリガナの法制化」が開始されたからだ。
世間では「キラキラネームは認められるの?」的な関心が強いが、行政DXの観点から見ると深く重要な意味がある。本題に入る前に、まず行政における「氏名漢字」の問題を整理しておこう。
自治体標準化で迷走する文字問題
現在、自治体情報システムの標準化事業が推進されているが、全国の自治体のシステムを標準化してデータ連携するためには統一した文字体系を採用する必要がある。当初の方針は「住民基本台帳と戸籍の業務は行政事務標準文字を使い、それ以外の業務はJISの範囲で使う」という画期的なものだった。
なぜ画期的かというと、外字(後述)を含む難しい漢字は住民票や戸籍などの証明書発行だけで使い、それ以外の事務処理は普通のパソコンやスマホで扱えるJISの範囲内で漢字を扱うという宣言だったからだ。
しかし、この方針は早々に撤回され、「すべての標準化業務で行政事務標準文字を使う」と方針転換され、まさに迷走状態となっている。