フリガナは行政DXの福音となるか?

①行政のデジタル化の推進のための基盤整備:氏名のフリガナが戸籍上一意に特定されることで、データベース上の検索等の処理が容易になり、誤りを防ぐことができる。

②本人確認資料としての利用:氏名のフリガナが戸籍に記載されることにより、本人確認資料として用いることができるようになるほか、正確に氏名を呼称することが可能となる。

③各種規制の潜脱防止:複数のフリガナを使用して別人を装い、各種規制を潜脱しようとする規制の潜脱行為を防止できる。

 このメリットを行政DXの観点から見ると、②の重要性に注目したい。その意味するところは、氏名を表現する文字コードが「有限になる」(濁点や半濁点を入れても100以下)ことだ。つまり、氏名漢字を無視して氏名フリガナだけで業務処理を行えば、サクサクと処理が進み、民間との氏名データの交換もスムーズになる。

 氏名漢字さえ使わなければ、異体字セレクタを使って6バイトや8バイトで表現される漢字を使うようなこともなく、保険証の資格情報を見たら氏名に「●(黒丸)」が表示されていた、などということも無くなる。

 この際、氏名漢字はこれまでのフリガナの位置づけ(あってもなくても良い添え物)とし、行政事務において正式な氏名はすべてフリガナを使うというルールにしたらどうだろうか。

 もちろん同姓同名が多くなるため、個人を特定するためにマイナンバーを使うのが前提だ。これが実現できれば、フリガナはまさに行政DXの福音となる。それができないというなら、我が国は延々とDXのDを続け、ガラパゴスへ一直線だ。

【榎並 利博(えなみ・としひろ)】
 1981年に富⼠通株式会社に⼊社。⾃治体の現場で、住⺠基本台帳をはじめあらゆるシステム開発に携わる。1995年に富⼠通総研へ出向し、政府・⾃治体分野のコンサルティング活動に従事。2010年に富⼠通総研・ 経済研究所へ異動し、電⼦政府・電⼦⾃治体、マイナンバー、地域活性化をテーマに研究活動を行う。2022年4⽉に行政システム株式会社 ⾏政システム総研 顧問および蓼科情報株式会社 管理部 主任研究員に就任。
 この間、法政⼤学・中央⼤学・新潟⼤学の各⾮常勤講師、早稲⽥⼤学公共政策研究所の客員研究員、社会情報⼤学院⼤学の教授を兼務。
「デジタル⼿続法で変わる企業実務」(⽇本法令)、「地域イノベーション成功の本質」(第⼀法規)、「共通番号-国⺠ID-のすべて」(東洋 経済新報社)など、マイナンバー、電⼦政府・電⼦⾃治体・地域活性化に関する著書・論⽂や講演等多数。

行政システム株式会社
行政システム総研