多くの行政文書が画像データで保存される現実

 また、行政文書における文字の扱いについても同様だ。

 デジタル化の進展により、テキストデータとしての活用が容易になっているにもかかわらず、手書き文化や特定のフォントへのこだわりなど、アナログ的な慣習が優先され、データの活用を妨げる要因となっている。

 例えば、戸籍については文字の標準化もできず、改製不適合戸籍という紙の戸籍がいまだに自治体で管理されている。

 そして、多くの行政文書がスキャンされた画像データとして保存され、テキストとして検索・分析できない状況が散見される。これはAIによるデータ分析やビッグデータ活用といった、現代の行政運営に不可欠な技術の導入を阻んでいる。

 さらに、紙媒体での決裁プロセスが残存しているため、意思決定のスピードが遅くなり、変化の激しい現代社会の課題に迅速に対応できていない。

 このような状況の根底には、デジタル化を進めることへの政治的リスクを過剰に恐れる心理が強く働いていると考えられる。

 新しいシステムへの移行には一時的な混乱や既存の権益構造への影響が避けられない。また、デジタル機器の操作に不慣れな高齢者層などからの反発を懸念し、目先の支持を失うことを恐れるあまり、将来的な国家の競争力や国民の利便性を向上させる大胆な決断が下せない。

 ポピュリズムは、目先の利便性や分かりやすさを追求する傾向があるため、デジタル化のような長期的な視点での投資や変化を伴う政策は、有権者の理解を得にくいという側面も持ち合わせている。

 結果として、日本はデジタル化において世界の後進国となりつつある。