日本を停滞させるアナログ信仰・ポピュリズム

 IT革命元年と言われる2000年当時、時の総理大臣がITを「イット」と読んで嘲笑されるなど、政治家のITリテラシーは低く、デジタルに対する理解度も低かった。ただ、それから二十数年経ち、誰もがスマホというコンピュータを携帯する社会になり、政治家といえどもデジタルに対する理解度はかなり上がったに違いない。

 しかし残念ながら、現在の日本にはデジタルに関して明確な矜持を持った政治家がほとんど見当たらない。

 デジタルを理解している多くの政治家は洗練されたデザインや利便性の追求には余念がないが、本質的な部分に手を突っ込むことをためらっている。日本の伝統や文化といった名目のもと、前時代的なアナログシステムへの強い信仰に染まっている国民に忖度しているようだ。

 このアナログ信仰・ポピュリズムは、単なる懐古趣味にとどまらず、具体的な政策決定や制度設計において、現代社会の要請に逆行する選択を促す深刻な要因となっている。

 このアナログ信仰・ポピュリズムは、具体的な制度改革において顕著に表れる。

 例えば、戸籍制度や不動産登記といった、長年にわたる慣習やしきたりに深く根差した制度については、デジタル化の必要性が叫ばれながらも、マイナンバーを活用した抜本的な改革に手を付けようとしない。

 これらの制度は、複雑な手続きやデジタルといえども紙をベースとした管理がいまだに主流であり、国民の利便性を著しく損ねている。役所での手続きには長い待ち時間が発生し、相続時などでの遠隔地からの手続きはさらに困難を極めている。

 データの一元管理が進まず、異なる部署や省庁間での情報連携がスムーズに行われないため、非効率な業務が蔓延し、結果として国民へのサービス提供に遅れが生じている。

 マイナンバーの活用とデジタル化によってこれらの手続きをオンラインで完結させることができれば、国民の時間的・精神的負担は大幅に軽減され、行政コストの削減にもつながるはずだ。