広島を訪れる理由は「戦争と平和」だけではない
「なぜ新聞社を辞めてフリーランスになったのですか」。そう尋ねられ、自分のルーツがある広島の地で取材を続けたかったから、などと答えながらも、こう話した。「理念とか掛け声としての平和ではなく、もっと具体的に平和を考えたかった」。そして、「一つ、残念な例を挙げると」として、数日前から考えていたモヤりを吐露した。
「なぜ広島ってこんなに投票率が低いのか。そう思ったときに、みんな平和って言うわりには民主主義って言わないなと。戦争がないという意味の平和も大事。だけど、自分たちのことは自分たちで決める、対話をして、ちゃんと意見を出し合って、私達の社会のことをみんなで決めようっていう民主主義が、平和都市を自称する広島でないがしろにされている、その矛盾のようなものがずっと気になっていた」
先述の具体的な数字に言及しながら話をしたが、広島で選挙の投票率が著しく低いということを、彼らは意外なことだと受け止めたようだった。むしろ彼らの地元は全国的に見ても投票率が高い方だということも、伝えた。
彼らからは、矢継ぎ早に質問が飛んだ。「投票に行くことが平和につながるのですか」「戦争のない世界イコール平和、って考えてしまうけど、それだけじゃない。そのことに多くの人が気づけるようにするために、どのように行動していきたいですか」――。
自分たちが暮らす社会について、一部の人たちだけが勝手に決めたルールに、他の人たちは黙って従わざるを得ない、そんな社会って決して平和とは言えないよね?
同じような属性の人たちの集団が、ちょっとでも異なる要素がある人たちを排除するような社会って平和だと思う?