クロマグロでも似たような構図が…

 現時点で必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれが出てくる可能性がある種は「付属書Ⅱ」に記載される。商業取引は禁止されないものの、輸出国は取引によって害はないことを科学的に立証し、輸出許可書を発行しなければならない。

 ヨーロッパウナギはここに記載されており、欧州が輸出を認めていないために事実上の輸出禁止になっている。今回の提案はすべてのウナギをここに入れようというものだ。

 ヨーロッパウナギが規制に追い込まれた責任は日本にもある。

 日本へのウナギ供給量を示したグラフを見ていただきたい。水産庁が国内の生産統計と貿易統計を集計した供給量は輸入が始まった1960年代から増加し、90年代後半には輸入量が10万トンを超えた。この過程で昭和60年あたりからヨーロッパウナギを中国に持ち込んで養殖するビジネスが急成長した。経済成長を背景にした消費拡大で、ニホンウナギだけでは足りなくなったからだ。

 養殖したウナギは大消費地の日本に向かう。漁獲圧力が高まったヨーロッパウナギの資源は減少。2007年にオランダで開かれた締約国会議で付属書Ⅱへの記載が決まった。

 同じような構図は大西洋クロマグロでも見られた。スペインやマルタ、トルコなど地中海沿岸でとれたクロマグロを飼育して太らせ、日本に送る「蓄養」ビジネスが拡大。地中海沿岸各国から日本が輸入するクロマグロの量は1998~2006年の間に4倍近くに増えた。

 蓄養ビジネスによって漁獲が増えた大西洋クロマグロの資源量は激減。2010年にカタールで開かれた締約国会議では商業取引を原則禁止にする付属書Ⅰへの記載をモナコが提案、EUもその修正案を提出した。日本は商業取引の禁止はクロマグロ資源の持続可能な利用を否定するものだとして反対。参加国を説得してなんとか両案とも否決にこぎつけた。

 CITESの禁輸措置を回避する代わりに、大西洋・地中海域の資源管理機関である「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」が漁獲規制を強化、資源量の回復を導いた。

 話をウナギに戻そう。