「白いダイヤ」を巡って密漁や不正流通も

 ウナギの養殖は、すべて天然の稚魚(シラスウナギ)に依存している。現在の水産研究・教育機構は2010年に世界で初めてウナギの完全養殖に成功したが、人工種苗(稚魚=シラスウナギ)の商業生産には至っていない。

 どのような餌を与え、どのような環境で育てれば生存率が高まり、生産コストを抑えられるか。まだ試行錯誤が続いており、現時点で、人工稚魚の価格は高騰した天然物よりも3倍ほど高くなってしまう。

 今年の天然のシラスウナギの漁獲は最近では珍しく順調で、取引価格も下がった。それでも2025年漁期(24年11月〜25年4月末時点、速報値)の平均は1kgあたり130万円で、前年度は同250万円だった。直近のプラチナの小売価格(消費税込み)が1kg700万円強なので貴金属レベルと言える。

「白いダイヤ」とも呼ばれるシラスウナギの現状が密漁や不正流通を誘発する。ネットで「シラスウナギ漁 副収入」と検索すれば、簡単に稼げるアルバイトのように誘うページが多く出てくる。シラスウナギの量が減ることで取引価格が高騰、それが漁獲圧力を高める悪循環は象牙と似る。

 今年は国内漁が順調だったために養殖池に供給された輸入シラスの量は、池入れ数量全18.2トンのうち3.4トンにとどまった。ただ、国内が不漁になれば輸入依存度は高まる。2019年は国内産が3.7トンに対し、輸入したシラスウナギは11.5トンに達した。

 海外で養殖したウナギやその加工品の輸入も多い。日本人が土用の丑にウナギを食べられるのは、輸入に頼る側面が大きい。CITESの規制対象になればこうした輸入のハードルが上がり、国内での養殖生産にも支障が出る。

 EUが今回、すべてのウナギを規制の対象にしようとする背景には、アメリカウナギなどを使った養殖も増えてきたことがある。世界自然保護基金(WWF)ジャパンと中央大学は6月、国内で昨年販売された蒲焼き(133点)をDNA分析した結果、約4割がアメリカウナギだったと発表した

 国内産(51点)はニホンウナギだったものの、輸入品(82点、すべて中国から)の半分以上はアメリカウナギで、わずかだがヨーロッパウナギも見つかった。