「まずは一週間だけ、お試しください」の狙いとは
この構造は、オウム真理教が「ハルマゲドン(最終戦争による世界の破局)」の到来を予言し、「教祖と教団の信仰だけが生存への道である」と説いたことに重なります。「不安の喚起」と「救済の提示」が一体化した心理的誘導です。
さらにマインドコントロールを強化するために「権威効果」を用いています。「○○大学名誉教授」が登場して、「素晴らしい研究成果です」などと言ったり、「△△大学と共同研究」と表現したりして、安心材料を提供します。
また、「ハロー効果」も駆使して安心感を演出しています。「ハロー」とは「聖人や天使の頭の光」という意味で、ある一部の情報が、全体をよく見せる効果をもたらします。有名タレントたちが「もう欠かせません」「長く続けられるのはこれだけです」と力説します。そして、「天然由来」「国産」という言葉で「体にやさしい」「信頼できる」といった印象を与えています。
——まずは一週間だけ、お試しください
これも、よく聞くフレーズです。人は自分の言動に一貫性を持たせたい心理的傾向があるという「一貫性の原理」を利用したものです。ハードルを下げた誘い文句で、心理的抵抗をなくす戦略です。「ちょっとだけ」と始めた行動でも、自分の選択として受け入れると、やがて習慣化することが多いものです。だから、消費者を商品購入の入り口にやさしく導いているのです。
私は今回の記事を書くにあたって、19本の健康食品のCMを精査し、こういった人の心理現象を巧みに利用した手法が張り巡らされていることを改めて実感しました。
また、そういうCMを野放図に放送しているテレビ局のCM考査のあり方にも疑問を抱きます。そして、もっと問題の根が深いと考えるのは、CMの核心部分である「効果」の表現方法です。