「効果があります」とは書けない機能性表示食品

 健康食品のCMの多くは「機能性表示食品」です。これは、「体重減少をサポートする機能が報告されています」などと成分の働きを表示できるものです。ここで、注目すべきは、「報告されています」という、何とも曖昧な言い回しを使っていることです。

 成分の働きこそが商品のセールスポイントでありながら、「効果があります」とは言えず、「効果が報告されています」という表現を使うしかありません。ちなみに、特定保健用食品(トクホ)は、国が効果や安全性を審査しているので、「効果があります」と表示できます。この点について専門家は次のように解説しています。

 機能性表示食品は、「文献的に機能が確認されている成分が入っているからといって、その製品に機能があるとは保証できないので、表示に『効果があります』とは書けない」(『健康食品で死んではいけない』長村洋一著・講談社+α新書)とされています。

 2015年に規制緩和で導入された機能性表示食品は、トクホとは異なり、国の審査は必要ありません。科学的根拠を示すとされる研究論文を国(消費者庁)に届け出ればよいことになっています。

機能性表示食品やトクホなどの違い(出所:消費者庁ホームページ

 コストや時間をかけずに、打ってつけの研究論文を提示すれば、間接的表現ながら「効果」を謳える機能性表示食品はメーカーにとって好都合なのでしょう。10年間で件数が25倍に増加しています。

2015年度:270件→2024年度:6700件超(日本経済新聞 6月21日

 一方、機能性表示食品を導入したことにより、国民生活センターへの危害相談は高止まりしているとのことです。2015年度は907件でしたが、2019、2020年度は3000件台に達し、その後も1000件台で推移し、導入前の2倍程度の水準になっているそうです(前出の日本経済新聞記事による)。

 2024年3月に発覚した小林製薬の紅麹サプリ事件は、死者も出て深刻な社会問題に発展しました。この紅麹サプリも機能性表示食品で、一時は健康食品全体の安全性に対して厳しい視線が注がれました。政府も、この問題を受けて、健康被害情報の報告を義務づけるなど規制を強化しました。