スズメガが運ぶ驚きの花粉量

 スズメガが雌花に1回訪れた時にどのくらいの数の花粉が付くのか、共同研究者に調べてもらった。

 雌花がつぼみのうちに覆いをかけておき、花が咲いたら観察するときだけ覆いを外し、昆虫が来るのをじっと待つ。昆虫が訪れ、花を去ったらすぐにまた覆いをかけ、他の昆虫を遮断する。しばらく後に雌しべを取り出して、雌しべの表面にくっついた花粉を実体顕微鏡を使って数えるのだ。

 その結果、驚くべき事実が判明した。1回の雌花への訪問でミツバチが平均して4粒、マルハナバチが9粒だったのに対し、スズメガはなんと65粒の花粉がついていたのだ。

ニガウリの雌花を1回訪れた時に雌しべに付着した花粉数。ミツバチやマルハナバチは1回訪花してもそれほど多くの花粉が付かないが、スズメガは1回訪花するだけでかなりの数の花粉が付く。(Kishi et al. 2025の図を改変)

 スズメガはホバリングしながら口吻をチョンチョンと伸ばすだけで、すぐに別の花に移っていくのでそんなに花粉が付くとは思っていなかった。口吻は意外とネバネバしていて花粉がつきやすい構造になっているらしい。

 論文のサイトではサプリメンタリーデータとして動画が見られるので参考にしてほしい。