
(岸 茂樹:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 上級研究員)
多くの哺乳類や鳥類と同様に、世界的に昆虫は減り続けているとされる。それにもかかわらず、日当たりの良い場所に干していた布団を取り入れるとひょっこり出てくるあのカメムシたちはなんなのか。
「我が家にやってくる昆虫たちはちっとも減っていない」──。そう感じている方も多いかもしれない。特に昨年、2024年はカメムシが多く発生したためニュースで見た方も多いだろう。今年もカメムシは多いのだろうか。
農業害虫として知られるカメムシ
一口にカメムシといっても多くの種類(種)がいる。カメムシはカメムシ目というくくりの昆虫で、日本に1300種以上確認されている。「口吻(こうふん)」を持っているのが特徴で、セミやアメンボ、ナンキンムシもカメムシの仲間である。これらの種のバリエーションを見るだけでもとても多様な暮らしぶりをしていることが分かる。
農業ではカメムシといえば多くが害虫で、コメやモモ、ミカンなどの農作物を吸汁してダメにしてしまう。
都市部で悲鳴の原因になっているのは農業害虫としてよく知られている大型のカメムシたちである。代表的なものがアオクサカメムシ、ミナミアオカメムシ、チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、ツヤアオカメムシ(冒頭写真)である。
前2種のアオクサカメムシとミナミアオカメムシはダイズ、インゲン、トマト、ピーマンなど多くの農作物の害虫であり、後3種のチャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、ツヤアオカメムシは主にモモやミカンなどの果物の害虫である。彼らは時に大発生して農作物に大きな被害を出すので、生産者にとっては切実な問題である。